元社長だから書けるモータ制御あれこれ

モータ制御に関するTIPSをご紹介していきます。

モータの負荷試験機

モータに関わっている皆さんの中で、負荷試験装置についてお困りの方は多いのではないでしょうか。
私はモータドライバの機能試験を行う際、社内では無負荷試験のみを行い、あとはお客様の所に出向いて実負荷試験、というパターンが多かったのですが、ドライバの殆どの問題は負荷を掛けた時に発生します。試験環境はお客様によってまちまちです。
で、壊れるのも一度や二度ではなく、それをお客様の目の前でやってしまうわけですから目も当てられません。
なんとか社内で殆どの確認はできないものかと考えていました。
しかし一般のモータ試験機は多機能であるものの高価です。
 
負荷を与える方法として、パウダーブレーキ、ヒステリシスブレーキ等がありますが、ここではブラシレスモータを負荷として使用する方法をご紹介します。
 
ダイオードブリッジを介してモータをスライダック等の可変抵抗に接続するという方法があります。
しかし、負荷を大きくする場合、抵抗値を下げていく必要があります。
これは抵抗の許容電力を下げていく方向になります。
最大負荷時にスライダックが焼けてしまう恐れがあります。
 

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          図1 スライダック接続の場合
 
また複数の抵抗をタップ切替で使うという方法もありますが、段階的にしか負荷を変えられず使い勝手が良くありません。
 
そこで製作したのが図2のような回路です。

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            図2 負荷試験機ブロック図

 

ダイオードブリッジにて発電機として使用しているモータの誘起電圧を整流し、負荷抵抗に直列に接続されたMOSFETPWM制御します。

デューティ比により負荷量を0~100%まで制御できますので本格的な負荷試験機になります。

点線内の具体的な回路図は図2の通りです。
 

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               図3 チョッパー部回路図

 

 
TB1にモータを接続し、TB2に抵抗を接続します。
U1のuPC494CはPWM専用のICです。
図の構成ではDTC端子の入力電圧にデューティ比が比例します。
スイッチによって2種類の電圧を切り替え負荷変動を与えられるようにしています。
PWM周波数は5番、6番端子の時定数で決めます。
9番から出力されるPWM信号をバッファを介してMOSFETに接続しています。
抵抗はデューティ比100%時に最大負荷となるような抵抗を接続し、PWMによって負荷を調整します。
  
この場合ですと、常に抵抗全体を利用することが可能となり可変抵抗を使用する場合の問題を解決できます。
更にはPWMデューティによって負荷を制御できますので、急激な負荷変動を与える事が可能になります。
 
写真1は400Wクラスのテスト用に製作したテストベンチです。
 

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              写真1 テストベンチ
 
 
この方式のメリットとしては以下のような点が挙げられます。
【1】試験に最も合ったモータ(発電機)を選ぶことができる。
例えば高速のモータを試験したい場合、市販の試験システムでは回転数の制約を受ける場合があります。
この方式であれば、同じモータを2台用意することでテストベンチを構成することもできます。
 
【2】安価にテストベンチを構成することができる。
モータ2台と固定台があればテストベンチが構成できますので、非常に安価に構成することができます。
また、精密にトルクを測定したい場合はトルクセンサを使用することになりますが、例えばユニパルスのトルクセンサ等、小型で比較的安価な物を選定することができます。
 
 【3】モータ出力、トルクの推定ができる。
回路内の電圧Vと電流Iを測定することで、試験モータの出力を知ることができます。
H(W)=√3V*I*cosΦ+I^2*Rm+P0
V:モータ電圧
I:モータ電流
Rm:モータ巻線抵抗
P0:負荷モータの機械損失
cosΦ:力率(この場合ほぼ1となる)
この時、トルクは以下の式で求めることができます。
T(kgcm)=971*H(W) /N(rpm)
回転数は誘起電圧波形から容易に測定することができます。
負荷モータの温度変化によってRmの値、磁束密度等が変化しますが、温度補正テーブル等を作成すれば精度を上げることが可能です。
 
【4】長時間試験が可能
この方式ではモータ出力を消費するのは抵抗になります。
ですから長時間の運転が可能です。
モータの温度上昇試験、耐久試験、環境試験などに威力を発揮します。